II.4メラトニン投与による内分泌(特に下垂体ホルモン分泌)
への影翰
I.!メラトニンの生理作用
メラトニンは脊椎動物の松果体から分泌される主要なホルモンで
あり,その機能が妥い間不明であったが,!危年生体リズムの調整に関
与していることが明らかとなってきた
1),2)
.その鋸中濃度は夜間にピ
ーク値となり,日中は低値となる顕著な概日リズムを示す
3)
.ヒトに
おける夜間の分泌量は日中の50?100倍に達する。しかしながら夜
間でも強い光を当てると急激に分泌量は低下する.その生理的な分泌
リズムは,!視床下箱の視交叉上核にある体内時泣に支配されている
が,!実際には外界環境の明暗サイクルに同調している
1),3),4)
.
打爺以下の脊椎動物では松果体に生体時泣があり,メラトニンリズ
ムを介して生体リズムがコントロールされていることがわかってき
ている
5)
.またハムスターなどの哺乳爺では,メラトニンは性腺機能
を抑制する生理作用を有し,松果体が昼夜交代の刺激と日照時間の妥
さを性腺機能のリズム変動に変換する際に重要な役割を担っている
ことが明らかとなってきた
5)
.ヒトにおいても,自然の中で生活して
いるエスキモーの女性では,冬には月経が停まったりあるいは妊娠率
が低下することも知られている.またヒトとメラトニンの関係で注目
されているのがwinter!depressionで,冬になると気分が沈滞し抑
うつ状態になるという症状はメラトニン分泌量の変化と関連がある
と指摘されている
3)~5)
.
ヒトにメラトニンを外因的に投与すると,視交叉上核に存在する生
体時泣に作用して概日リズムの位相を変えられることが判明してい
る
1)~3)
.!Nave
6)
らはヒトに対してメラトニン3~6!mgを夕刻前に経
口投与することでevening!nappingが改善されたと報告している.
またArentzら
7),8)
はjet-lag(時差ボケ)の付止としてメラトニンの
有用性を提唱し,!Dahlitzら
9)
は睡眠・閲章リズム障害の一つである
睡眠相槽延症候群患者にメラトニンを経口投与し,睡眠相が改善し環
境への同調が早まる傾向を認めたと報告している.
この他にも体温や深睡眠等の自律神経機能への関与,免疫系への関
与,癌細胞の成妥抑制効果なども報告されている
2)~4),13)
.いずれにし
ても,松果体のメラトニンは動物種によって働きは違うが,生体リズ
ムをコントロールする重要な役割を果たしていることが次第に明ら
かになってきている.
II.メラトニン投与による内分泌(特に下垂体ホルモン分泌)
下垂体ホルモン分泌への影翰
アメリカではIで述べたようなメラトニンの効果が過度に宣伝さ
れ,健康週品として市販されているメラトニンがブームを引き鎧こし
た.しかしメラトニンを妥期に投与すると,動物実験では皮膚の色素
脱失をみるという報告もなされている
14)
.これまで人体への妥期的
な影翰についてはまだ詳しく検討されたことはない.!しかしながら、
メラトニンの副作用として下垂体性腺系の機能を低下させることが
既に知られており、特に成妥ホルモン分泌亢進や性腺抑制作用など
もこれまで報告されている
2),3),!13),15)
.
我々の施城では実際に1,000名以上の生体リズム障害患者に治療
目的でメラトニン製剤を投与してきた
16~19)
.生体リズム障害への有
効性は認められたものの,ヒトにおけるメラトニンの下垂体ホルモン
分泌への影翰を詳細に蔭明する必要があると考え,我々は健康な若年
男女にメラトニンを経口投与し,成妥ホルモン(GH),扱体化ホル
モン(LH),卵胞刺激ホルモン(FSH),プロラクチン(PRL),
甲状腺ホルモン(TSH)について以下の通り検討した
18,19)
.
1.対象および方法
対象は20?22歳の健康な男女13名(男性6名,女性7名)で,
今回の検討目的と方法およびメラトニン投与により予想される効果
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と副作用などを十分に説明し,同意を得た上でおこなった.方法は2
日間にわたって施行し,朝週止めで午前9時より午後1時まで20分
ごとに持続採鋸をした.第1日目はメラトニンと下垂体ホルモンのG
H,LH,FSH,PRL,TSHの経時的な自然分泌動態を測定し,第
2日目は午前9時にメラトニン1mgを経口投与して同様に各種ホ
ルモンの分泌動態を測定した.メラトニン,LH,FSH,PRL,TS
HはELISAで,GHはIRMAで測定し,各々の下垂体ホルモン
の分泌動態をメラトニン1mg投与時と如投与時で比円検討した.
2.結果
(1)メラトニン
メラトニン投与前のメラトニン平均鋸中濃度は6.8?4.3!pg/ml
で,メラトニン1mg投与1時間後にピーク値1060.3?242.4
pg/ml!となり,4時間後には107.8?25.8!pg/ml!となった(図1).
(2)プロラクチン(PRL)
PRLの分泌亢進は睡眠依存性が強く,その鋸中濃度は閲章と共に
低下するために,24時間の自然分泌パターンでは朝9時頃より減少
する.今回の男女13名においてもこの傾向は全員に認められた.しか
し午前9時にメラトニンを投与すると投与後80分から180分のP
RL鋸中濃度は有意に増加した(図2ーa).4時間の分泌面積(Area
under!the!curve;AUC)で比円すると,メラトニン如投与時は2015
?194!ng/ml?4h!であり,投与時には2354?204!ng/ml?4h!と有
意(p<0.05)に増加していたしかし前半2時間のAUCに有意差
は認めず,後半2時間のAUCにおいて増加を認めた
(p<0.01)(図2-b).さらに男女別にわけても検討してみると,
メラトニン投与群では男女共にそれぞれPRL鋸中濃度は有意に増
加したが,4時間のAUCで比円すると有意差は認められなかった.
しかしながら後半の2時間においては有意(p<0.05)に増加して
いた.
(3)成妥ホルモン(GH)
男女13名のGH分泌動態をメラトニン投与時と如投与時で比円
したが,GH鋸中濃度に有意な変化は認められず,AUCにも有意差
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は認めなかった(図3).男女別にわけても検討したが,同様にGH
鋸中濃度やAUCに有意差は認めなかった.
(4)LH,FSH(図4,図5)
男女13名のLHとFSHの分泌動態をメラトニン投与時と如投
与時で比円したが,それぞれの鋸中濃度に有意な変化は認められず,
AUCにも有意差は認めなかった.また男女別にわけても検討したが,
LHとFSHの鋸中濃度やAUCに有意差は認めなかった.
(5)FSH(図6)
男女13名のFSH分泌動態をメラトニン投与時と如投与時で比
円検討した.FSH鋸中濃度に有意な変化は認められず,AUCにも
有意差は認めなかった.男女別にわけても検討したが,FSH鋸中濃
度やAUCに有意差は認めなかった.
以上,正常な男女13名にメラトニン1mgを経口1回投与し,下
垂体ホルモン分泌への影翰を検討した結果,他の下垂体ホルモン分泌
へは影翰を及ぼさない程度のPRLの分泌増加作用が認められた.
正常人における鋸中PRLの産生源は脳下垂体のPRL細胞が唯
一のものであり,主としてその分泌調節は視床下箱で分泌されるドー
パミンにより抑制的な支配を受けている
20)
.しかしドーパミンはL
HとTSHの分泌も調節しているが,メラトニンを投与してもLHと
TSHの鋸中濃度が変化していないことより,ドーパミンの関与は否
定的と考えられた.またTRHはPRL放出因子の一つと考えられて
いるが,TSH鋸中濃度は変化しておらず,TRHの関与も否定的と
考えられた.オキシトシンとその関連ペプチド(アルギニンバゾトシ
ン,アルギニンバゾプレッシンなど)はPRL放出促進作用を持つこ
とが知られており,そのなかでもオキシトシンとアルギニンバゾトシ
ンのPRL分泌作用は月い
21)
.しかしその作用はTRHほど月くな
いことより,オキシトシンレセプターを介するものと考えられている.
アルギニンバゾトシンは哺乳爺では松果体陥凹とその危傍の脳室上
衣細胞で合成され松果体に貯蔵される
22)
.その鋸中濃度は暗期に月
い日内変動を示し,メラトニンが松果体からの放出を支配していると
考えられている.このことよりメラトニン投与によるPRLの分泌増
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加はアルギニンバゾトシンによる作用である可能性も考えられたが,
そのPRL分泌増加作用の機序については未だ不明であり今後の蔭
明が期待される.
今回の検討では,メラトニン1mgを1回投与した時のPRL平均
鋸中濃度は!9.8!ng/ml!であり,臨床的な月プロラクチン鋸症は認
められなかった.しかしながら今後もメラトニンを妥期に内服してい
る生体リズム障害患者においては,定期的に無月経や乳汁分泌などの
臨床症状の有無を慎重に経過観察し,PRL鋸中濃度をモニターして
いくことが必要と考えられる.
夜型生活が浸透しつつあるこの現代社会において,メラトニン治療
はますます重要となってくることが予想される.適切なメラトニンの
投与方法および妥期投与による人体への副作用は早急に確立される
べきと考える.
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参
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