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2010年9月アーカイブ

メラトニンは、抗癌剤治療や放射線治療の副作用を軽減し、生存率を高める効果が報告されています。免疫療法と併用して免疫増強効果を高める効果や、手術後の創傷治癒を促進する効果、癌性悪液質の緩和など末期癌における有効性も報告されています。その有効性は複数の臨床試験で確認されており、さらに安価(1ヶ月分が5,000円~10,000円)であるため、費用対効果の観点から最も有用な抗癌サプリメントと言えます。
メラトニンの原料は、食事で摂取されるトリプトファンです。
トリプトファンとは、牛乳から発見された必須アミノ酸の一種で、人間の身体にとって、非常に大切なアミノ酸のひとつです。
トリプトファンを含む食品としては、チーズやバターやマーガリン、ヨーグルトがあります。
トリプトファンは、高い精神安定効果がありますので、寝る前に牛乳を少しずつ飲めば、メラトニンの分泌の助けになりますので牛乳があまり好きではない方も、できるだけ飲むことをお勧めします。
眠気は、大脳の神経伝達物質やホルモンが長時間活動して蓄積される睡眠物質や体に蓄積された疲労物質による、休息のサインです。
睡眠が得られると、脳内や体にたまった睡眠物質や疲労物質も分解、排出され再び活発に活動できるようになります。

睡眠には、レム睡眠とノンレム睡眠と呼ばれる、浅い眠りと深い眠りが交互に繰り返されるリズムがあり、成長ホルモンの分泌や体温、コルチゾールといった副腎皮質ホルモン、メラトニンなどの分泌も、
快適な睡眠と深く関わっているといわれています。


睡眠と体温の役割
私たちの体温は、昼間活動しているときには高く夜になると下がります。
一般に、体温がいちばん低くなるのは明け方近くで、この頃の眠りがいちばん深くなります。
体温を下げることによって、より深く眠れる状態を作り出しているわけです。
夜明けを迎える頃になると再び体温が上がりはじめ、目覚めやすい状態を作るとともに、活発に活動するための体の準備を行っています。
体温は、快適な眠りを得るための重要な要素のひとつといえます。

睡眠と成長ホルモン分泌の役割
私たちの体の成長や修復、疲労回復に欠かせない成長ホルモンの分泌も眠りが最も深く、
体温がいちばん低下する明け方近くのノンレム睡眠時にピークを迎えます。
成長ホルモンの分泌は子供の頃が最も多く大人になるに従って減少します。
昔から「寝る子は育つ」と言いますが、よく眠る子供たちは、
成長ホルモンの分泌も活発に行われますから、十分な根拠を持ったと言えます。

メラトニンと睡眠
メラトニンは脳の松果体と呼ばれる器官から分泌されるホルモンで、網膜が受け取る光の量でその分泌量が変化します。
メラトニンは光の量が減少する夜間に最も多く分泌され、睡眠と深いつながりがあることがわかっています。
周囲が暗くなって網膜が受けとる光の量が減るとメラトニンの分泌が活発になり、その結果大脳は周囲が暗くなったを知ります。
そして、体温を下げたりしながら、眠りに入りやすい体の準備を整えます。
朝が来ると網膜に入る光の量が増え、メラトニンの分泌減少して大脳は朝が来たことを感じて
活発に活動できるように体の内部でその準備を整えます。
メラトニンの分泌量は年齢と共に低下してゆきます。一般的に70歳代を越えると昼と夜のメラトニンの分泌量が、
ほぼ同じくらいになるとされています。お年寄りは朝が早いといわれているのも、おそらくそうした理由からなのでしょう。
ちなみに、朝目覚めたときに一定時間日光を浴びると良いといわれるのは、このメラトニンの働きによって、
体を目覚めさせる効果があることに基づいています。
このメラトニンの働きを、日光を浴びるよりももっと効果的に利用しようという考えから生まれたのが、
不眠症の改善に用いられているお薬やサプリメントです。
サプリメントにもいろいろあり、その副作用などについて疑問視する研究者もいるようですから、服用にあたっては事前に医師の診察を受ける、信頼できるメーカーのもを購入して服用するといった
注意が必要です。
あなたは寝つきが悪くないだろうか。不眠症の人が聞いたら余計に眠れなくなりそうな研究結果が明らかになった。慢性的な不眠症で1晩の睡眠時間が6時間未満の男性は、毎日6時間以上眠る男性よりも早期に死亡するリスクが高いという。

 不眠症は最も一般的な睡眠障害で、寝つきが悪い、何度も目が覚めるといった症状がある。アメリカ睡眠医学会(AASM)によると、アメリカ国民の約30%が不眠症に悩んでいるという。症状が1年間以上続いている人は「慢性不眠症」と診断される。

 不眠症については長年さまざまな研究が発表されてきた。「今回、死亡率の上昇など大きな身体的影響を及ぼす深刻な病気だと明らかになった」と、研究責任者でペンシルバニア州ハーシーにあるペンシルバニア州立大学睡眠研究治療センター(Sleep Research & Treatment Center)所長のアレクサンドロス・N・ブゴンツァス(Alexandros N. Vgontzas)氏は話す。

 睡眠不足を訴えた人々とライフスタイルの因果関係まで具体的に調査したわけではないが、「どのような理由があっても、睡眠不足は健康によくない」とブゴンツァス氏は強調する。一例として、同氏が以前発表した論文によれば、若年層が睡眠時間を2時間削って1週間過ごしただけでも、心血管疾患を引き起こす炎症にかかりやすくなるという。

 1990~1995年、ブゴンツァス氏のチームはペンシルバニア州で20~100歳の男性741人(平均年齢50歳)を無作為に選び、研究の第1段階に参加してもらった。被験者は不眠症かどうかを自己申告し、実験室で1晩過ごした。その際に各被験者の睡眠時間が記録された。

 被験者の自己申告と睡眠時間の記録を組み合わせたところ、6%が慢性的な不眠症であると判定された。

 一方、1994~1997年に同じ年齢層の女性1000人を対象に調査したところ、慢性と判定されたのは9%だった。

 男性は調査から14年、女性は10年経過した2007年に調べてみると、1晩の睡眠時間が6時間未満の慢性不眠症男性のうち51.1%が亡くなっていた。これに対し、通常の男性の死亡率は9.1%だった。

「喫煙、肥満、睡眠時無呼吸などのリスク要因を考慮したとしても、慢性的な不眠症の男性が早期に死亡する可能性は通常の4倍高いという結果になった」とブゴンツァス氏は語る。

 女性では不眠症と早期の死亡にこのような関連性は見られない。不眠症の女性とそれ以外の女性のどちらも、対象期間の死亡率は2%をやや上回る程度だった。

「男女の違いには2つの理由が考えられる。女性の調査は後から始まったので、男性よりも追跡期間が短かったこと。また、男性の不眠症は絶対数は少ないが、症状が深刻化するケースが多いことだ」とブゴンツァス氏は説明する。

 論文では死因について言及していないが、「不眠症が直接の原因で死亡することはない」とブゴンツァス氏は言う。その代わり、患者は慢性的な不眠症によって徐々に消耗し、ほかの病気にかかりやすくなる。例えば今回の研究では、糖尿病や高血圧も患っていた不眠症の男性は、比較的健康な不眠症の男性よりも調査期間中の死亡率がさらに高かった。

 不眠症の原因はまだほとんど解明されていない。「生まれつき寝つきの悪い人がいるだけだ、という意見もある」とブゴンツァス氏は話す。さらに、不眠症の治療方法も不明な点が多いという。例えば、ほとんどの不眠症の治療薬は不定期に発生する不眠の改善が目的で、認知行動療法のような心理学的介入も重症の不眠症患者には効果がないようだ。

「公的機関や企業はより良い治療法の研究を支援し、医師たちは不眠症の診断にもっと真剣に取り組む必要がある。医者の間では"不眠症は厄介者"と思われてきたが、そのような姿勢を変えなければならない」とブゴンツァス氏は指摘している。

 今回の研究は9月1日付の「SLEEP」誌で発表された。

ナショナルジオグラフィック 公式日本語サイトより 
ちょいメタボのEさん(46歳)は宵っ張りの朝寝坊。仕事中、急に眠くなることもある。単なる寝不足と考えていたのだが、ある日、居眠り運転で事故を起こしてしまった。同乗していた妻から睡眠外来を受診しなければ離婚だと脅されている──。

 睡眠障害というとまず、不眠症が思い浮かぶが、働き盛りに多いのは日中、異常な眠気に襲われる「過眠症」。20~59歳勤労者の約1割が相当するといわれている。深夜労働や交代勤務で体内時計が狂うことで生じる睡眠障害や、2003年2月に起きた山陽新幹線の居眠り事故の原因として知られる睡眠時無呼吸症候群、そして周期性四肢運動障害が代表的な原因。

 睡眠時無呼吸症候群は眠っているあいだに舌の付け根や軟口蓋(のどちんこ)が緩んで気道をふさぎ、大いびきと同時に10秒程度の呼吸停止が起こるもの。重症者では1時間に30回、ひと晩で200回以上も呼吸が止まる。隣で寝ている家族は堪ったものではないが、本人はまったく気づかない。覚醒反応で自動的に気道が開き呼吸が再開するからだ。専門外来の初診患者のほとんどは、真剣な面持ちの妻と不承不承顔のご主人というコンビらしい。

 ともあれ睡眠中に覚醒反応が起こるのだから、当然、眠りが分断され睡眠の質が極端に悪化する。早寝を心がけても昼間の眠気を抑えることはできない。居眠り運転の頻度が重症者で3.5倍、軽症者でも2倍以上高いことがわかっている。

 一方、周期性四肢運動障害は眠っているあいだに、足を蹴り出すような動きを20~40秒周期で繰り返すもの。やはり気づかないうちに覚醒反応が起こり、睡眠がとぎれてしまう。一説では神経伝達物質のドーパミンの機能低下や鉄分不足が原因とされているが、まだ確かなことは不明だ。有病率は4%ほどで割とありふれた症状だが、一般にはあまり認知されていない。いびきをかかないのに日中の眠気がひどい人は、こちらを疑ってみるといいだろう。

 過眠症が怖いのは日中の眠気や集中力の低下もさることながら、高血圧や動脈硬化、糖尿病といった生活習慣病に悪影響すること。特に血圧に関しては心筋梗塞や突然死につながる仮面高血圧との関連が指摘されている。また、睡眠の質・量の低下が食欲ホルモンの増加を招く。メタボが過眠症を呼び、過眠症がまたメタボを悪化させてしまうのだ。その点では不眠症より危険な病気だといえるかもしれない。

ダイヤモンド・オンラインより 
「なかなか寝つけない」「寝ても眠りが浅くて、疲れがとれない」「寝よう寝ようと思うと、よけい眠れなくなってしまう」

このような不眠症状は、「うつ」状態においてはもちろんのこと、精神的なバランスが乱れた場合に生じてくる、かなりポピュラーなものです。

通常の治療では、「うつ」などの原疾患に対する治療薬とともに、その不眠の性質に応じて睡眠導入剤が処方される対症療法が行なわれます。

しかしながら、不眠がかなり深刻になってくると、強力な睡眠剤を複数組み合わせて用いても「眠れる時には眠れるけれど、やっぱり眠れない時には薬を飲んでも眠れない」という状態に陥るケースも珍しくありません。何が何でも眠れるようにとさらに薬を増強していくと、強い眠気や脱力が長時間持ち越されてしまい、翌日が使い物にならなくなってしまったりします。

今回は、このように通常行なわれている薬物療法で見落とされがちなポイントについて、つまり、不眠という状態をどう捉えるべきなのか、不眠という症状からどんなメッセージが受け取れるのかといったことを考えてみたいと思います。


「眠れない」とは?

まずは、「眠れない」ということについて、よく吟味してみましょう。

「眠れない」とは、「眠りたいのに眠れない」「眠るべきなのに眠れない」ということを省略した言い方であろうと思われます。

ここで、前連載でもしばしば用いた人間の仕組みの図(図1)を用いて考えてみることにしましょう。



前連載の第1回でも触れましたが、「頭」は本来「~すべき」、つまりmustやshouldの系列の言葉を用いる場所です。一方の「心」は「~したい」、つまりwant toの系列の言葉を発します。

図のように「心」と「身体」は矛盾なく一心同体につながっていますが、理性や意志の場である「頭」は、「心」(=「身体」)に対してコントロールをかけたがる性質があって、「心」との通路を閉ざして一方的な独裁体制を敷きがちです。それは「頭」が「心」との間の蓋を閉めてしまった状態(図2)で、人間は「頭」vs.「心」(=「身体」)と分断されてしまい、両者は対立の様相を呈することになります。


さて、この仕組みから考えますと、「眠るべき(頭)なのに眠れない(身体)」は蓋が閉まっている状態として理解できますが、「眠りたい(心)のに眠れない(身体)」ということはあり得ないことになります。さてこれは、どういうことなのでしょうか。


眠りは「心」=「身体」のもの―「頭」に命令されてたまるか!
これは、「頭」による偽装工作の結果だと考えると、簡単に説明がつきます(前連載第9回参照)。

つまり、「眠るべき」を「頭」が「眠りたい」に偽装したということです。この種の偽装は「頭」がしばしば行なうもので、「学校に行くべき」を「学校に行きたい」にすり替えたり、「会社に行くべき」を「会社に行きたい」にすり替えたりするのです。

偽装というのは大げさに響くかも知れませんが、別の表現で言うならば、「心」(=「身体」)の声を無視して「頭」の意志が一方的に作り出した「~したい」であったということです。

少々回り道をしましたが、ここで整理しておきますと、「眠りたいのに眠れない」という言い方も、実はその正体は「眠るべきなのに眠れない」だったということなのです。

つまり「眠れない」という状態は、「眠れ!」と高圧的に指令する「頭」と、「意地でも眠るものか!」と反発する「心」(=「身体」)の対立の構図で理解できるということです。


なぜ「心」(=「身体」)は、「眠るまい」と反発するのか?
「眠るまい」と「心」(=「身体」)が反発するのには、いくつかの理由が考えられます。

1つは、そもそも眠りは「心」(=「身体」)の側が自然に行なうはずのものであって、「頭」によって指示される筋合いのものではないということです。

 「頭」に相当する部分を持たず「心」(=「身体」)だけでできている自然界の動物においては、睡眠は自然な欲求であり、葛藤なく実現されています。ですから、「心」(=「身体」)にしてみれば、「頭」が睡眠に口を差し挟んでくることは越権行為であり、それに反発を覚えるのも当然のことでしょう。

現代人の生活は、案外歴史の浅い、時計仕掛けの硬直化した時間によって毎日の生活が規制されています。

季節が変わっても、天候がどうであれ、体調や気分がどんなでも、決まった時間に起床し出勤しなければなりません。そこから逆算して、睡眠を○○時間とるべきだから何時には寝るべきである、と「頭」が計算し、きちんと実行できることが「規則正しい」ことだとして奨励されています。

日々刻々と変わる生き物としては、必要とする睡眠の長さが日によって違ったり、眠くなる時間が変動したりすることはごく自然なことなのですが、しかしこれも現代の常識からすれば、「不規則な睡眠」として異常視されてしまう状況なのです。また、「うつ」状態においてよく見られる昼夜逆転の状態も、その意味が熟慮されずに、はなから病的なものと捉えられてしまう残念な傾向もあります(前連載第7回参照)。

フランスの啓蒙思想家ルソーは、代表作『エミール』の中で次のように述べています。

食事と睡眠の時間をあまり正確にきめておくと、一定の時間ののちにそれが必要になる。やがては欲求がもはや必要から生じないで、習慣から生じることになる。というより、自然の欲求のほかに習慣による新しい欲求が生じてくる。そんなことにならないようにしなければいけない。

子供につけさせてもいいただ一つの習慣は、どんな習慣にもなじまないということだ。(今野一雄訳、岩波文庫より)

1日を一生と捉えて毎日の死を迎える
「心」(=「身体」)が「眠るまい」とするもう1つの理由として、今日1日の幕を引く気になれないということが考えられます。

前連載の第21回でも触れましたが、メメント・モリ(memento mori「死を想え」「死を忘れるな」という意味)という古いラテン語の格言があります。これは、「死」というものを想うことによって、ともすれば浪費されがちな「生」の有限性とはかなさを知らしめる警句です。

「よく死ぬ」ためには「よく生きなければ」なりません。ここで言う「よく生きる」とは、自分に生来与えられた固有の資質を存分に開花させ、自分らしい「生」を享受する生き方のことです。

これを1日の単位で考えてみても、同様のことが言えるのです。

1日を締めくくる眠りを、いわば「毎日の死」として捉えてみると、今日1日を「よく生きて」いなければ、「よく死ねない」。つまり、「死ぬに死ねない」がゆえに不眠になってしまうわけです。

1日をどう締めくくるか
もちろん、1日は限りある短い時間ですから、欲張ってあれもこれもすることはできません。しかしながら、1日の中でたとえわずかでもその人らしい時間を持つことができたか否かは、その日の眠りを大きく左右します。

 よく「身体を動かして疲れれば眠くなるものだ」と言われたりしますが、これは「身体を動かす」ことがその人らしい過ごし方である場合に限って有効なものであって、そうでないタイプの人がいくら身体を動かしても、「身体は疲れているのに、頭だけが冴えてしまって眠れない」ということになってしまいます。

 静かに読書したり、音楽を聴いたり、日記をつけて自分との対話を行なったりすることがその人にとって大切な「自分らしい時間」であるならば、たとえ30分でもそんな時間を持つことによって、自分の奥底で何かが充足し納得するので、眠気も自然に訪れやすくなるでしょう。
どのように過ごすことが「自分らしい時間」になるのか、それは各人各様ですから、自分自身で試行錯誤しながら見つけていく必要があります。

 おびただしい「すべきこと」に追い立てられ日々を過ごさざるを得ない私たちにとって、ここで述べたようなことを実行することは、なかなか容易ではないかも知れません。しかし、何が自然で何が不自然なことなのか、日々の生活に何が欠けているのかということに無自覚であるよりは、せめて問題の所在に気づいているだけでも大きな違いなのです。

 また、薬物療法を要するような不眠に苦しんでいる方であっても、社会化された「頭」が、内なる自然(「心」=「身体」)に向かって力ずくで睡眠剤という爆弾を投下し「あるべき睡眠」を強要するようなイメージではなく、時間に制約された状況に生きているがゆえに薬を使わざるを得ないことを、自分の「心」(=「身体」)に詫びつつ、「これで少しでもお休みください」とお願いするような気持ちで薬を使用することが大切だと思うのです。

ダイヤモンド・オンラインより

明け方にならないと眠れず、朝は目覚まし時計をかけておいても起きられない。そして、蒲団を出るのはいつも昼過ぎ......。長い休みの間に生活のリズムが狂ってしまい、休みが終わって学校や仕事が始まっても、元の生活パターンに戻れないことがあります。

 そんな人は、睡眠相後退症候群という病気かもしれません。今回は、最近増えてきたこの症候群について、詳しくご紹介します。

■周りにこんな人はいませんか?

 睡眠相後退症候群 というのは、「睡眠の時間帯が、好ましい時刻よりも遅い時間帯で、持続して固定されている状態」のことです。

 この病気の人は、寝つくのは遅い時刻ですが、毎日ほぼ一定で、いったん寝つくとグッスリ眠ることができます。睡眠時間は、長めのことが多いようです。この状態が数ヶ月~数年も続くので、普通の社会生活を送るには、かなりの不都合が生じてしまいます。

 残念なことに、遅れた睡眠の時間帯を本人の努力で早めることは、ほとんど不可能です。入学試験や恋人とのデートがあるときでも、本人の強い意志にもかかわらず、朝、起きることができません。そのため、朝から予定がある場合には、徹夜して備えることがよくあります。

 無理をして早い時刻に起きると、頭痛や頭が重い、食欲がない、疲れやすい、集中できない、眠いなどの症状が現れます。しかし、これらは午前中だけのことが多く、普通は昼過ぎにはなくなり、夕方近くなると逆に調子が出てきます。朝の体調不良が続くと、自信がなくなる、気持ちが落ち込む、ヤル気がなくなるなどの、抑うつ状態になることもあります。

 次の項目に当てはまる場合に、睡眠相後退症候群 が疑われます。

* 十分な努力にもかかわらず、望ましい時刻に寝つくことが困難である
* 起きる意志は強いのに、社会生活を送るために必要な時刻に起床できない
* 自然に眠りにつくと、睡眠の質は良く、睡眠時間も十分である
* 睡眠の時間帯が遅れた状態が、少なくとも1週間以上続いている

■努力しても、起きられません!

 体内時計がコントロールする生体のリズムは約25時間で、地球の1日である24時間よりも少し長めです。

 そのため、睡眠と覚醒のリズムは遅れる方向になりやすく、早める方向にはなりにくい性質があります。つまり、人間はもともと、夜更かしの朝寝坊にはなりやすいけれど、早寝早起きはしにくいものなのです。

 睡眠相後退症候群 は、思春期から青年期に発症することが多く見られます。この病気を持つ人の割合は、日本の高校生を対象とした調査では0.4%、15~59歳の一般市民を対象とした調査で0.13%と、報告されています。

 また、アメリカでは、睡眠障害のクリニックを訪れた人の約1割が、この病気と診断されています。

 体内時計そのものが故障していたり、体内時計を調整する働きが上手くいかないため、睡眠相後退症候群になると考えられています。また、この病気の人は睡眠時間が長いことが多く、体内時計をリセットする時間帯に十分な光を浴びられないことも、睡眠時間帯が遅れたままになってしまう原因の1つです。

 長い休みの間に昼夜逆転の生活をしていたり、受験勉強のため夜遅くまで起きている生活が続くと、睡眠相後退症候群を発症しやすくなります。健康な人でも、長期休暇の後には生活のリズムが崩れることがありますが、休み明けには元に戻ります。しかし、この病気では、睡眠と覚醒のリズムが元に戻らなくなってしまうのです。

 不登校や引きこもり、うつ病、統合失調症など、社会との接点が減ったり、十分な太陽の光を浴びない状態でも、同じような症状を起こすことがあります。

また、平均9時間以上の睡眠が必要な 長時間睡眠者は、朝に太陽の光を浴びにくいので、体内時計のリセットが起こりにくく、そのため睡眠相が後退してしまうことがあります。

■起きる時刻を遅くしていきます

 治療が上手くいって睡眠の時間帯が正常になっても、その後、生活習慣が乱れると、元に戻ってしまいます。

 そのため、睡眠相後退症候群 の治療には、本人の強い意志と周囲の協力が、長期間にわたって必要です。

 ここでは、睡眠障害の専門の医療機関 で行われている、主な治療法をご紹介します。

<生活指導>
 基本的には、睡眠の環境を整えたり、生活習慣を改善したりすることが大切です。軽症の場合には、生活指導だけで睡眠の時間帯が、元に戻ることがあります。

・朝、日光を十分浴びる
・目を覚ましたら、朝食を摂る
・日中には、戸外で体を動かす
・夕食後は、アルコールやカフェインを摂らない
・寝つく予定の3時間前から、照明を少し暗くする
・就寝前には、テレビゲームやビデオ鑑賞を避ける

<時間療法>
 睡眠相後退症候群の人は、遅くまで起きていることには慣れているので、寝つく時刻をさらに遅らせます。そして、起床時刻も毎日3時間ずつ遅らせて、1週間ほどで、目標とする起床時刻になるようにします。望ましい起床時刻になったら、しばらくその状態を保って、習慣化します。多くの場合、専門の医療機関に入院して治療します。

 時間療法はとてもよい方法ですが、効果が1ヶ月くらいしか続かないことがあります。そのため最近では、次に述べる高照度光療法やメラトニンなどを、組み合わせて治療することが一般的です。

<高照度光療法>
 朝、目から入った強い光は、脳の体内時計に作用して、生体のリズムを早める働きがあります。これを利用して、起床後に1~2時間、2,500~1万ルクスの光を浴びるのが、高照度光療法です。治療中、ずっと光を見つめている必要はありませんが、1分間に数秒以上は光を見つめないと、十分な効果が得られません。

<メラトニン>
 睡眠ホルモンと呼ばれるメラトニンには、体内時計をコントロールする働きがあります。薬事法の関係で、日本国内では売られていませんが、個人輸入や海外旅行の際に、手に入れることはできます。希望する入眠時刻の1~2時間前、あるいは前の夜に寝ついた時刻の4~5時間前に、メラトニン1~3mgを飲みます。約4割の人に効果があります。

<睡眠薬>
 寝つきたい時刻の直前に飲む、という通常の使い方では、ほとんど効果がありません。睡眠の時間帯を前にずらす働きを期待して、作用時間が短い睡眠薬を、希望する就寝時刻の5時間前に内服します。

 休みが終わっても、夜更かしの朝寝坊のパターンがなかなかとれないときには、睡眠相後退症候群かもしれません。睡眠環境を整えたり、生活習慣を変えても治らない時には、睡眠障害の医療機関を受診することをお勧めします。

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